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2025年07月09日「『神戸賞』大賞受賞者によるプレスセミナー」を開催しました

菅博士は、有機化学と生物学にまたがる融合境界領域の研究により、従来の化合物医薬品(低分子医薬品)、近年開発が進むバイオ医薬品(高分子医薬品)に続く次世代の医薬品として期待が広がるペプチド医薬品(中分子医薬品)の道を拓くと同時に、高効率な創薬技術を確立して世界的に注目を集めています。
そんな菅博士にインタビューしたのは、学生時代に菅先生の授業を受けていたという科学コミュニケーターの加藤昂英氏。奇しくも師弟トークとなった会場には多数のメディアの方に集まっていただいたほか、多くの方々にオンライン配信を視聴していただきました。
セミナーのテーマである「異端からの発想」について、菅博士はペプチド創薬の道を拓いた遺伝暗号の人工的な改変やそれを可能にする人工酵素「フレキシザイム」を開発した当時を振り返り、「当初の反応は全然よくなかったのですが、今ではこれほど役に立つツールはないと評されています」と話し、「異端は認められた瞬間に先端になる」というご自身の研究哲学を語っていただきました。
同時に、「『独創に光を』という神戸賞のコンセプトは、異端に光を当てることで先端になる、という私の研究哲学とも合致するものです」とも話してくださいました。
いわゆる科学少年ではなく、ジャズギターにのめり込んでいたご自身が研究者になるきっかけの話では、「分かっていることがたくさんある中で自分のオリジナリティを加えて何かを解明するということが、ジャズのインプロビゼーション(即興演奏)に通じるものがあって、『研究っておもしろい』と思うようになりました」と、ここでも“異端的”な経緯を披露していました。
また、現在ではペプチド創薬をめざす企業が国内外で多く誕生しているほか、副作用が多い低分子医薬品のデメリットと、経口投与できない高分子医薬品の弱点を補う新たなペプチド医薬品のいくつかが重要な臨床試験の段階までたどり着いていることなど、ペプチド創薬の最新情報も披露。
若手研究者や研究者をめざす学生に向けたメッセージでは、「夢なき者に理想なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、実行なき者に成功なし、ゆえに夢なき者に成功なし」という吉田松陰の言葉を引き合いに出し、「多くの人を助けたいという夢があってこそ研究のアイデアという理想が生まれ、アイデアが生まれれば計画・実行はできるものです」とエールを贈ってくださいました。
中谷財団としては、現役の研究者はもちろん、将来研究者をめざす学生の方々などにとっても、今回のセミナーが新たな道を拓く指針になればと考えております。
なお、このセミナーの模様は7月15日より財団のウェブサイトで動画配信いたします。見逃された方や、もう一度視聴したい方は、ぜひ視聴お申し込みの上ご覧ください。
(配信期間:7月15日~10月15日)