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2023年03月24日 アドバンスト

ドイツ・ブレーメンDFKI(ドイツ人工知能研究所)滞在記

こんにちは、京都大学工学部物理工学科2年の伏見宗太郎です。2023年2月からDFKI Bremen で研究留学をさせていただいています。

こちらでの生活も1ヶ月以上になり、研究もそれ以外の活動も落ち着いてきました。中間報告として、こちらの生活について書かせていただきます。

 

ラボの様子

ラボのあるBremenはドイツの北部の都市で、冬は氷点下10℃を下回ります。3月になっても寒く、積雪もあります。また、月に数日しか晴れの日がありません。夏は過ごしやすく快適らしいのですが、微妙な時期にきてしまったようです…。春になってくると晴れの日が増えるらしいので、楽しみです。

 

DFKI BremenはBremen大学のキャンパス内にある研究施設のうちの一つです。DFKI(Deutsches Forschungszentrum für Künstliche Intelligenz)は、ドイツの人工知能研究所で、Bremenにある研究施設がDFKI Bremenです。

僕がお世話になっているUnderactuated Labは、大学の中にあるのにもかかわらず、大学の生徒はほとんどいません。ラボにいるのはPhD生かResearcher、他大学からの短期インターンの修士生ばかりです。全員が自分より何歳も上ですが、PIも含め皆が仲良く、歳の差や立場の差はあまり気にならない環境です。

  • ブレーメンの銅像 案外小さいです ブレーメンの銅像 案外小さいです
  • DFKI Bremen DFKI Bremen
右から、DFKIの施設長、ラボメン、PI、僕

僕は毎日10時〜19時くらいでラボに行っています。ラボに来る時間も人それぞれで、朝早くきて早く帰る人、昼過ぎにきて遅くまでいる人、リモートワークとオフィスワークを交互にする人など、自由な働き方が認められています。

 

昼食は、ほぼ毎日皆で食堂に食べに行きます。

食事中は、普通の会話が半分、お互いの研究の進度を話し合ったり、PIに自分の研究を相談したりするのが半分くらいです。頻繁にPIに会えるのはとても安心します。

食事後は、コーヒーマシンのところで雑談をすることもあります。修士の生徒たちとはよくこの時間で馬鹿話をして盛り上がっています。

研究活動

詳しい研究内容については最終報告書に譲るとして、大まかにどのようなことをしているのかを書かせていただきます。

僕はHopping-leg という脚のロボットをジャンプさせるという研究をしています。今は、ある制御則の理論の実機実装をしています。旧世代の脚ロボットではすでに実装されているものなので、実装自体は完全に新しいものではないです。ですが、現ロボットでは初めてとのことなので、色々改善しながら頑張っています。

 

このインターンではメンターはおらず、PIがsupervisor としてついてくれています。手取り足取り教えてはもらえないので、作業は全て一人で行っています。当初は不安でしたが、自分で考えて作業を決め、実験を行えるのはとても力になります。また、全てを投げてもらい、信頼されていることに責任を感じ、モチベーションにもなりました。今では、このhopping-legのことならラボで自分が一番わかる、と自負できるようになったので、とても達成感を感じています。特に、自分の意見をラボメンが尊重してくれ、意見を取り入れてくれることが嬉しいです。

 

今は、昨年のインターン生が書いている論文のためのデータ集めをしています。これが終われば、2週間ほど自由な時間ができます。その期間に、今回の研究留学の成果を何かの形でまとめられるよう、リモートで研究が続けられるよう、実機でのデータを十分に取ろうと思います。

 

ラボの外での生活

平日は、基本的にラボから帰って自炊をする生活をしています。僕はインターナショナルのサッカーチームに所属していて、週に2回練習か試合をしています。サッカーの日は夕食を作る元気がないので、ケバブを買って帰ることが多いです。トルコ系の人が多いからか、ケバブは美味しく、比較的安価で手に入るので重宝しています。金曜日は、誰かと一緒に夜ご飯を食べることが多いです。ラボの皆で食べに行ったり、サッカーチームの人たちと自炊をしたり、Erasmus students(EU域内の留学生)に誘われて、パブやクラブにも行くこともあります。

 

週末は、ほとんど毎週旅行をしています。ケルンやブリュッセル、アーヘン、ミュンヘンなどに行きました。EU域内の旅行はすごく安く、楽です。昔からの友人に会えたり、去年の夏季留学プログラムで一緒だった友人に再会できたりするのはとても嬉しいです。旅行をしない週は、サッカーチームの人やラボの修士の生徒と遊んでいます。日本のように娯楽の多いところではないですが、ランニングやサウナなどをして楽しんでいます。

  • ラボメンとそのパートナー達での飲み会 ラボメンとそのパートナー達での飲み会
  • ラボメンとの飲み会その2 ラボメンとの飲み会その2

これまでの生活で感じたこと

夏季留学に比べ、自分の裁量でできることが増えたと同時に、責任も強く感じるようになりました。研究面では、研究内容をほとんど自分で決めることができる代わりに、ある程度の責任を持ってそのプロジェクトを自分で完成させなければなりません。また、日々の生活でも、自分から他の人と交流をしなければ、ほとんどの時間を一人で過ごすことになります。もちろん2ヶ月であれば研究に没頭して一人で生活をするのも可能です。しかし、将来PhDでもっと長い時間を一人で過ごすことになると考えると、ある程度の交流は必要になるので、この機会にその生活を仮体験したいと思っています。

 

また、自分が将来研究者になるべきなのかどうかについて、真剣に考えるようになりました。僕は、学ぶことをやめたくないから研究者になりたい、と今まで思ってきました。しかし、自分が向いているかどうかは別の問題です。ラボのPhD生曰く、「毎朝、問題を解決するためにラボにくる。今日それが解決するかもわからないし、そもそも解決策なんて存在しないかもしれない。しかも、それを解決しても確実にその次がある。その人生を楽しめるかどうかだ。」らしいです。自分がそれを楽しめるかどうかはまだ分かりません。この留学と後2年間の学部での研究生活を通して、しっかり見極めたいと思っています。

 

最後になりましたが、この留学を可能にしてくださった、中谷医工計測技術振興財団、受け入れを認めていただいたAndreas Dengel氏、Frank Kirchner氏、Shivesh Kumar氏に感謝申し上げます。これからの1ヶ月弱、後悔しないように全力を尽くします。