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国際学生交流プログラム助成 グローバルNow!
2023年05月05日 アドバンスト
米国・ジョージア工科大学滞在記
名古屋大学 工学部 化学生命工学科 新4年の秋田佳穂と申します。
米国ジョージア工科大学 Prof. Shuichi Takayama研究室 (以下Shu Lab) での研究留学について、中間報告をさせていただきます。
詳しい研究内容は最終報告に譲り、今回は主に現地での生活について記したいと思います。
アトランタ・ジョージア工科大学の様子
私は今回、夏季Nakatani RIESと同じジョージア工科大学 (Georgia Institute of Technology, 以下GT) に滞在しています。
GTがあるアトランタはアメリカ南部最大の都市と言われています。1996年夏季オリンピックが開催されたことや、コカ・コーラやCNNなど有名企業の本社があることで有名です。気温は3月中旬で既に夏のような暑さでしたが、湿度が低いため、私は日本よりも過ごしやすいと感じています。3月上旬には桜も咲き、アメリカでも四季を感じられたのが嬉しかったです。
前回はGTにおける夏休み~新学期の滞在でしたが、今回は学期中の滞在です。そのため学生が勉強している姿をどの場所・どの時間帯でも見かけることができます。またキャンパス内にある広場では頻繁にイベントが行われています。学生が学業だけではなくsocialなことも精力的に取り組んでいる様子を知ることができ、いつも刺激を受けています。
前回の滞在でも感じたことですが、GT研究者は学部生に比べて、US国外出身の人の割合が多くなります。ホストラボも含めて同じ建物には特に韓国、中国、インド出身の方が多い印象で、ほぼ毎日英語以外の会話も聞こえてきます。さらに、同じ国出身であってもGTに来るまでに過ごしてきた環境によって、コミュニケーションの取り方・研究の進め方は人それぞれ変わってきます。このような環境で生活するうちに、スタンダードが異なる状態で双方の意見を正しく汲み取って協調する力が、国際的な環境で研究者になるにはより必要とされるのだと再認識しました。
ラボでの生活
私は血管内皮細胞(血管の最内層を形成する細胞)を用いたオルガノイドついて、メンターを含む3人チームで研究を行っています。新規in vitroシステムとして世の中に提案するべく、論文を仕上げることがチーム目標です。今までラボに蓄積されてきた結果を踏まえて、説明のためにさらに必要な実験・解析を進めています。
チーム内でタスクを分担しており、私は培養操作を担当しています。渡米後2週間程度でSafety Trainingとラボ独自の基本培養操作テストを通過したものの、オルガノイド作製操作には繊細な注意を要する点がいくつもあり、一人で綺麗にできるようになるのにさらに3~4週間ほど要しました。
Shu Labメンバーのラボ滞在時間は人によって様々です。私が加入した後に、母国に帰省したり大事な試験を控えていたりした人が多かったのもありますが、ミーティング・データ解析・文献調査などはリモートで行い、実験のときにだけラボに来る人が多い印象です。ここまでフレキシブルなラボは日本のバイオ系ではなかなか無い気がするので、Shu Labに加入してすぐの頃は驚いていました。
全体ミーティングがある木曜日には普段より多くのメンバーが一堂に集まります。普段なかなか会えない学部生とじっくり話す良い機会となります。ミーティング後にはお菓子や飲み物を片手にカジュアルな雰囲気で、雑談とディスカッションが入り混じった会話を続けます。ラボで用いられている手法について先輩たちに気軽に質問できる場として、大切にしたいと思っています。
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色付きPBSでオルガノイド作製手法の練習
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384-well plateの培地交換を自動でやってくれる機械 これを使ってたくさんのオルガノイドを長期培養します
日々の過ごし方
宿泊先はAirbnbで探し、ラボまで片道15分程度を徒歩で通学しています。サマータイム期間は日没が20時過ぎなので時間感覚がつかめず、まだ夕方だと思って油断して作業していると気づいたら外は真っ暗だった、ということがしばしばあります。さすがに治安の悪いアトランタを夜一人で歩くのは危ないので、そういうときはラボメンバーやGT自治警察に車で送ってもらっていました。今は暗くなる前に帰宅できるように気を付けて作業するようにしています。日本では夜遅くなろうと公共交通機関で安全に帰宅できるため、これに関してはアメリカ研究生活の不利な点かもしれません。アメリカでは治安の面でも車は必須だなと感じています。
宿泊先から歩いて行ける距離に大型スーパーがあるので、食事は簡単な自炊が基本です。昼食はラボメンバーや友人とGT内のフードコートで食べることもあります。その場合、量が多いので、本来1食分の量をその日の昼・夜の2食分として分けて食べる工夫もしています。
週末は友人と出かけることが多いです。Nakatani RIES US fellowsや前回の滞在で仲良くなったGT学生と約4か月ぶりに再開し、お互いの近況や学生生活について語り合うのはとても楽しいです。特に思い出深いのはNakatani RIES US fellowでShu LabのメンバーでもあるKelseyと実行したAtlanta walking tripで、主要観光スポットを約7時間かけて徒歩で巡りました。前回の滞在では行けなかった場所に行き、アトランタにより愛着を感じるようになりました。
また、友人の紹介で知り合ったGTへの交換留学生のグループと一緒に、ボストンやフロリダへも旅行へ行きました。同じく学部生で短期留学に来ている者同士、お互いのGTや母国での生活について話すことができ、ここでも刺激を受けました。前回と違い今回は単身滞在で少し心細かったため、現地で気軽に生活を共有できる新たな友人たちは、とても心の支えとなる存在です。
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ホストラボがあるKrone Engineered Biosystems Building
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US fellowでラボメンバーのKelseyとAtlanta walking trip
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GTのシンボルTech Towerと桜(3月上旬撮影)
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Prof. Takayama宅での集まりの様子
ラボメンバーが開催してくれたWelcome partyにて -
今回の滞在で新しく訪れたKrog Street Tunnel
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キャンパス内広場でのイベントで登場したラクダ. メンターと一緒に
研究留学で得た知見
今回の研究留学でも書ききれないほど多くのことを学んでいますが、その中でも滞在前半で感じたことがあります。それは、「研究は報告までが1セット」ということです。
これは、今回私が3人チームでプロジェクトを進めるという経験をしているからこそ学べたことだと思います。メンバー全員が実際に実験を行った人と同じくらい状況を理解できるように説明することで、プロジェクトをより前進させることができます。逆にこれができていないとミスコミュニケーションの原因となり、おかしな方向に議論が進んでしまうこともあります。
「自分が担当している実験に責任を持つ」とは、与えられた実験をこなして自分だけが結果を確認して終わるのではなく、情報を整理して、誰かから聞かれなくても自発的に伝えにいくことだと考えるようになりました。それは論文として世の中に伝えるという大きなレベルでも、日々の研究生活でメンバーに伝えるという小さなレベルでも共通です。その点において、日本の大学で学生実験レポートを目的→方法→結果→考察→結論というフォーマットで日々書いてきたことは、実際の研究生活において日常レベルでちゃんと役に立つのだと実感しました。
報告スキルも含め、自分の未熟さを感じ落ち込むことも多いです。しかし、英語環境下で自分の考えていることが思うように伝わらないからこそ、言語力と本質的な研究力を切り分けて考えて、自分がこれから伸ばしていくべき点を正しく認識するように心がけたいと思います。
最後に
今回の研究留学を可能にしてくださった中谷医工計測技術振興財団、ホストラボのProf. Shu Takayama, Dr. Soojung Lee, メンターのJeeyoung Kimさんを始めとする全てのメンバーに感謝申し上げます。この貴重な機会から最大限学べるよう、残りの期間も大切に過ごしていきます。
名古屋大学 工学部 化学生命工学科
秋田佳穂